「ダッチワイフ」の‘ダッチ’とか、「トルコ風呂」の‘トルコ’は、どの辺がその国っぽいのか? | 語源blog

「ダッチワイフ」の‘ダッチ’とか、「トルコ風呂」の‘トルコ’は、どの辺がその国っぽいのか?

 本当は「ダッチワイフはどの辺がオランダなのか?」についてネタにしたい!とか思っていたのですが、これ、昔の雑誌など調べても全然、分からないのですよね。

  海外では「竹製の抱き枕」を意味するダッチワイフが、なぜ日本ではアレ用の人形の名称になってしまったのか?今まで、いろいろなネタで「諸説ある」などとして複数の説を紹介したりしてお茶を濁してきたりしたのですが、このネタに関しては諸説どころか、1説も信憑性があるネタは出てこず……

 一応、「かつてアメリカで‘ダッチワイフ’という商品名でコレ系の人形が発売されたことがあり、日本のメーカーがその名をパクって‘ダッチワイフ’という商品名で売り出した。で、その名前が一般化した」という説もあったのですが……

 『日本週報』という雑誌(?)の1958年4月15日号に掲載された、南極観測船・しらせの隊員の性欲処理になどについて扱った「南極妻処女で帰還す」(すごいタイトルだ……)という座談会記事の中では、すでに見出しで「ダッチワイフとワイ画・ワイ本の効用」などと書かれているのですよね。南極観測隊がオーダーメイドでダッチワイフを作っている時代にすでに「ダッチワイフ」という言葉が「アレ用の人形」という意味で使用されている以上、「日本のメーカーが商品名に使った」という説はありえないと思うなー。

 ということで、このネタに関しては「よく分からない」という感じなので、その代わりに前述『日本週報』の中から発掘された、「南極観測隊が実際に持っていったダッチワイフの画像を紹介しておきましょう(冒頭の画像ね)。このダッチワイフ、マネキン人形をベースに作られ、実際に南極に持っていった際には両足が切断されていたそうです。で、隊員には「弁天さま」とか呼ばれて性欲処理に大いに期待されていたようなのですが……南極では、あまりの寒さに誰も使う気が起こらず、処女のままで終わったらしいですよ(笑)。

 とか、そんな感じですが、似たような、国名が絡んだアレな言葉には「トルコ風呂」というのもありましたね。この「トルコ風呂」という言葉、本場のトルコにも「トルコ風呂」と呼ばれる独特の形式のお風呂(現地ではハマムと呼ばれるスチームバス)があるので、僕はてっきり

トルコ風スチームバス・ハマムが、日本に伝わった後に(誤解されるなどして)全然違うサービスの付いたお風呂に変化した

とか、そんな感じだと思っていたのですが……

 『週刊文春』1973年5月14日号に掲載されていた、日本初のトルコ風呂・東京温泉(*1)の経営者・許斐文さんへのインタビューによると

「私たちは風呂付きの日本人に、トルコの王様のような気分を味わってもらおうというのでトルコ風呂と名付けただけなのですが」

ということだそうで。なるほど~、トルコのハマムとは無関係に、「ゴージャスっぽいイメージがある」ということで「トルコ風呂」という名前を考案したというだけなのですね。「トルコ風呂」という名称が廃止されるきっかけとなったトルコ人青年の抗議は「トルコがバカにされている気がする」とか、そんな感じだったと思うのですが……この言葉が生まれた段階では「トルコはゴージャスそうな国」という、プラスのイメージからだったのですね。


*1 東京温泉
 昭和26年オープン。「日本初のトルコ風呂」といっても、後々のものとは違い性的なサービスはなかった模様。インタビュー中では、許斐文氏は「ミストルコが、お客様と外で茶を飲んだだけでクビ」と断言していました。